卯月まゆこ(うづき まゆこ)

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作風概説

 哀調を帯びているがとても静かで優しい空気で、話も常に「優しさ」を追求しているよう。最近は少し時間差があるが、やはり暖かく心の芯からぬくもりが伝わってくる。

 可愛らしく、無駄のないしなやかな美しさがある絵。ネコ耳が好き?で擬人化動物がうまく、生き生きした描写がものすごくかわいい。画面に不思議な輝きがある。感情描写もうまいし、胸が痛いほど重い感情を描ける緊迫感もある。
 軽いユーモアも面白いし、話そのものも素直に入りこめる。切なく優しい気持ちになれるようなファンタジー(といってもアクションはない童話風)の設定もうまい。
 最近、おせっかいな女の子とそれを迷惑がる男の子などかなり心理的に重い話が多いが、それも深い優しさと感動をもたらしてくれる。


代表作

97「はじめましての幻
 彼女が欲しい博のところに、いきなり女の子の幽霊が。成仏するために今夜だけ、彼女にしてくれとの頼みで一晩二人で過ごすことに・・・ユーモアがあると同時に真摯で、わずかな時間を無駄にすまいと言う緊張感がある会話、お互いに慣れない恋愛に照れた表情、どんどん深くなっていく想い、夜の公園に漂う暖かく切ない霧のような空気、最後の幸福感、全てが最高の傑作!

98「猫月夜」
 黒猫のトトが毎晩出かける。おばあちゃんは猫が夜集会を開いてる、と言うので、確かめようとつけていったら広場に猫がいっぱい!本来怖いテーマをとても暖かく、リリカルに描いた。

99「予感の春」
 中学受験に失敗し、地元の中学に行くのが憂鬱でたまらない雪子。学校を案内して、と言ってくる人懐っこい少年、夏と秘密の中学探検。胸が痛むような表現で心の動きを鮮やかにつづっている。

99「きみにいいこと」
 だらしない人を見ると、つい注意してしまうひろこちゃんにはだらしない掛井はがまんならないほど気になる。そして、もうひとつ、幼稚園の頃雨の日、貸そうとした傘を拒否して雨にぬれるのが好き、と言った男の子の記憶とも重なっている。偽善の罪深さ、優しさの難しさを深く描いた傑作。

2000「さくらKiss」
 真雪ちゃんが一目ぼれした杉原くんに告白したら、キス体勢から口に桜の花をつけられて、一目ぼれはあてにならないからとはぐらかされる。お互いよく知らないからなら、とプロフィールを渡したりするけど親しげな女の子が出てきたり、彼が一目ぼれの相手は本当に自分かと疑ったり。なぜこんなに一目ぼれを信じないのか・・・真雪ちゃんがめちゃくちゃかわいいし、ラストにはのたうちまわった。


今までの実績、現在の地位

「なかよし」本誌登場経験もあるがなかなか後が続かない。単行本もまだ。増刊には年に一、ニ本だがよく見ると安定して出ている。

 ペンネーム「まるねこ」でファンロードの投稿常連。98年から2001年にかけてマンガも描いており、ラポートコミックス「まよいご前線」が出ている。


個人的な感じ、思い出

 その暖かさ、優しさ、切なさ、読後感は最高!もう「はじめましての幻」にぼろぼろに惚れ込んだ。ここ十年で五本の指に入るほど好きな作品。ネコ耳キャラクターも可愛らしく、その方向でも出てきて欲しい。それに真雪ちゃんのかわいらしさにはとどめを刺された。

 とにかく「なかよし」の、雰囲気そのものをより明るく、優しくするのに必要と確信している。ぜひ一度本誌連載をして欲しい!それも今風のオタク狙いではなく子供向きか正統派恋愛で…アニメ化にはつながらないかもしれないが、相当数のファンの心を癒し、とらえる力は間違いなくあるの
だから。本当にこの、悲しいまでに深い優しさが読者にとって、どれほどの救いになるか・・・。

 ファンロードでの活躍も嬉しかったが、その分「なかよし」はもったいないことをしていると思っていた。