上野すばる(うえの すばる)
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作風概説
絵はとても強い線で、魅力をはっきりと出せる。無邪気さと邪悪さが入り交じった表情は絶妙。
ホラーが上手。おどろおどろしい怪物描写より心理学の教科書のような、犯罪に魔が絡む作品や神話的な因果応報を巧みに描いた作品が多い。基本的に勧善懲悪で、半分くらいは救いのある作品。どちらにしても、巧みに人間の愚かしさ、悲しさを描いている。
昔は正統派ラブコメだったようだが、当時の単行本はカタログになく入手不能に近い。筆者も読んでいない。
代表作
94〜?「赤のカイン」単行本二巻。
吸血鬼、悪魔、救いの神と呼ぶものもいる、彼は吸い込まれるように赤く長い髪の男。
彼にオーラを吸われたものはその見返りとして、なにかの願いをかなえてもらえる。でもそれが、必ずしも幸せに結びつくとは限らない。
特に残酷なのが重傷を負った恋人を見つめる少女から始まる話。
突き落としたのは彼の成長を受け入れられなかった自分だが、それを知る時にはまた一ヶ月前に戻ってしまい永遠にカインとの出合いを繰り返す、という…
95〜96「アナザードア」単行本あり。
ドアの向こうから人間を学びにきた忌野りんねが、次々に人をドアの向こうの真実に。人間を研究し、同時にその闇を暴き出してくる。アウ0ーゾーンにネタなどが似ている気がする。
96〜98「真空怪談〜リアルハッカーズ〜」
機械音痴のむつみがもらった、規格外のおかしなノートパソコン。そのOSは電子霊、シン!悪霊、無意識の魔、宇宙人など様々な怪異と、電脳世界を舞台に戦っていく。痛快アクションな日常生活の精神病理学講座。
99「メフィスト・メール」
演劇サークルのホームページ、「メフィストの部屋」から使用許可を得たシナリオは一風変わった人魚姫。後半が新解釈で、魔女の誘惑によって王女を殺してしまい、しかも王子がその後を追って自殺、打ちひしがれる人魚姫を魔女が笑っている、とある。
王子様の駒井くんが前から好きな人魚姫役で主演の里奈は、稽古が進むにつれて王女役の森さんに嫉妬を感じるように。そして、突然腕、そして足と鱗のようなものが出てくる。
全てを振り払って演技に集中、でも演技の中、どんどん感情が人魚姫と同調して…破滅に向かってなだれ落ちていく緊迫感にあふれた展開、二重三重の意外で残忍で恐ろしいラストに背筋が寒くなる。しっかりした伏線もむしろ衝撃。
今までの実績、現在の地位
昔は恋愛ものだったようだが、ホラーに転向して実力を開花。るんるんでは常に連載しており、単行本も出ていた。
「るんるん」休刊以来「なかよし」のホラーが衰退してほとんど出番がなく、現在はレディースコミックで活躍しているという情報。
個人的な感じ、思い出
人間の業を暴き出す冷徹で残忍な話の構成には強い恐怖を抱いている。だが暖かい部分やユーモアもあり、ハッピーエンドの話は好き。
「赤のカイン」で、絵の天才と彼に嫉妬してその天才を奪おうとした少年の話、結局死んだ天才のほうが先にカインに依頼していて、天才そのものを奪おうとしたほうの命を奪っていき、絵筆を捨てれば助かると言われた彼は才能を守るため、あえてみずからの命はおろか、存在さえも捨てる…そんな、友情とも美への愛とも形容しようのない感情が特に心に残る。