ただ、荒廃した地表が限りなく続くこの景色を幸いにも目にとめる者はいない。
今・・・一つの歴史が幕を閉じたのである。
しかし、星はその力の偉大さを誇示するかのように、地の奥底に眠る生命体を呼びさました。
新しき歴史を生み出すがために・・・
『この地が、我らに帰ってきたのだ。』
魔族の台頭である。
星は新しき世界の幕開けに、異形の衆を呼び覚ました。この大地で生きていけるもの達を。
『美しい大地だ。』
『我々魔族以外は全て滅んだようだな。』
『うむ、いよいよ魔族の時代がおとずれたのだ。さっそく魔界に帰り、報告するとしようか。』
『かはっ』
『何者だ!!』
『ぐぼぉっ!』
二つの生命ある者が一瞬にして消えた。
星は、魔族の存在を認めなかったのだろうか。
いや、今出現し、この殺りくを行った新たなる異形の者に、星さえも驚いたことだろう。
彼は天より降りてきた。星が地底より魔族を呼び覚ましたのと同じく、天空は、彼方より何者かを呼びよせたのであろうか。
『この・・・ことを・・・魔界に・・・報告せ・・・ねば・・・』
倒れているスケルトンの口から一つの目玉がこぼれ落ちた。
瞬間、その目を足にはさみ込み、天空へと飛び立つ者がいた。
『スケルトンよ。お前の意志、しかと受け継いだ。』
新しい歴史は壮大なる本当のハルマゲドンで幕を開けた・・・
『ふふん、外の様子はどうだった。』
『まあ、これを見てくれ。魔族の者を集めるのだ。』
鬼の目が妖しく光ると、先程の地上での光景が次々と映しだされていった。
映写が終った。
ガーゴイル
『このホログラム、先程俺が偶然天空よりみたものだ。皆のものいかに思う。』
スライム
『スケルトンとミノタウロスの一族のものだな。』
ミノタウロス
『わが一族のものが、いともたやすくやられるとはな。』
スケルトン
『地表にまだ生物がいようとは思わなんだわ。』
Gスネーク
『いや、地表の生物は、虫ケラさえも絶滅した筈だ。』
アンドロスフィンクス
『では一体何だというの。我々は、人類が地表の王となる遥か以前より、地中に君臨していたのよ。』
その時、突然ガーゴイルが苦しみ始めた。
『ぐおっ。』
羽のはえし黒き使い魔は、一声吠えるとビクンビクンと、小刻みに震え始めた。
『か、体が・・・体が・・・ぐえっ!!』
その表皮を突き破り現れた薄紫色の細管が頭部に突きささると、彼は気の抜けたでくのように、ゆっくりと話し始めた。
『この者の声帯をかり、お前らに伝える。われらチリウス星系連合は、この星を131番目の植民星と決定し、植民を開始した。
おとなしく従うならばよし、歯向かうならば殺すまで。時間は与えぬ。答えは一つ。今、答えるのだ。』
『何をぬかすかっ!』
魔族の一人が、その鋭い爪を大きく振り上げた。
『わ・・・かっ・・・た・・・後悔・・・する・・・な・・・』
『ふざけるな。異星からの侵略者だと!なめた真似するんじゃねえ。』
ドラゴンニュートは雄たけびをあげた。
『闘いだ!この星を魔族の楽園とせんがため、あくまで闘うのだ』
ゴーレム
『まあ、待て。我々の地表での行動には制限がある。・・・何だ、この振動は!』
オーク
『地表だ!地表をスクリーンに映しだせ。』
ミノタウロス
『何だ、あの光は。あの光をアップにしろ。』
サイクロプス
『あれは石版か?何か文字が書いてあるぞ・・・星の軸を戻し安息の地に変えたるもの、地表の長となり平定を誓うものとする。 −黙示録27章− ・・・どういう意味だ!!』
ハーピィ
『地表で・・・地表で何か別の意志が働いているようだわ。』
一同が会している。
サイクロプス
『各一族より、一名ずつ代表を出すのだ。とにかく地表で何が起きているのか探らねばならん。』
ゴブリン
『うむ。地表では思うように行動できんからな。他の種族の助けが必要というわけか。』
オーク
『まあ、昼と夜は何とかなろう。しかし、サルバンの破砕日はどうするのだ。一瞬にして押しつぶされてしまうぞ。』
アンドロスフィンクス
『シャーマンの壷を使えば良い。幸い、我らは地表では、サルバンの破砕日しか行動できぬしね。』
ドラゴンニュート
『異星体との闘いに加えて、地表での謎の解明か・・・我らは、そこまでして地表に住まねばならぬのか?』
ゴーレム
『そうだ。地表を制するものこそ、この星の支配者だ。我々の住める地表にしなければならぬ。なぜ、サルバンの破砕日が起きたのか、あの石版が何なのか、知らねばならぬ。』
ハーピィ
『そうね、さっそく出発させましょう。』
そして、各種族の猛者達が集められた。
スケルトン
『我々にまかせておけ、調査などせんでも異星体など蹴散らしてくれるわ。』
魔族より選ばれし12名の勇者を待ち受ける運命、それがとてつもなきものであることを、この星さえも予測できなかった・・・