パターン分類10-2
大変に遅くなって申し訳ありません。何しろ、全てを一から始めるようなもので、今までの蓄積が全く役に立たないです。ジャンルを見いだし、整理し、それぞれについてパターン分類理論を作っていかなければならないもので・・・。どうしてもこれまでのようなペースでは行かないと思って下さいませ。恋愛の理論が一応できた次点で一区切りつけるべきだったのかも知れませんが、これが確立していれば様々な知識が加わり、結果的に恋愛の理論においてもいっそうの発展が見込めます。非常に困難な道ですが、やれるだけやってみます。どうぞおつきあいくださいませ。
んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。
かなり大きな見落としがあったかも知れません。(顕在化している)恋愛感情がないのに相手を誘惑する、等についての検討が不足な気がしてきました。これについては後程まとめたいと思います。
今回も前回の続きで、様々な恋愛もの以外のジャンルについて検討してみます。
様々な舞台等、別ジャンルの中での恋愛にどのような特殊パターンがあるかは別章後述とします。やや各論ぎみですので。
最も重要な分類はテーマだと思います。友情、家族、夢、勉強や校則など学校そのもの、受験、他にもペット、実社会との接触など色々とあります。
結局は読者である少女の成長こそが少女マンガの本質でしょう。それをどう表現するかの違いです。その意味では肉体そのものも重要なテーマであるべきですが、これは下品に流れ易く規制水準から言っても(生理等を正面から描くことは非常に難しく、少なくともなかよしでは全面禁止)非常に難しい為ギャグとして以外ではほとんど見ません。
少女マンガにおいて、もちろん少年マンガでも実生活でも友情の重要性は表現するのも難しいものです。小学生〜高校生にとっては人間関係の多くを占め、対等の人間関係としてはほとんど唯一のものです。また恋人がいる者は大概少数派ですが、友達はそれよりはるかに多いです。全くいないと言うこともないわけではないのですが。それはそれで友達ができるまでのパターンが確立されています。友情は基本的に女子間の関係が描かれます。男子間の友情がサブエピソードとして描かれることも多いですが、その大半は三角関係の中でです。男子と女子の友情は少女マンガでは結局恋愛に変わってしまうケースが多いですね。友情の変形として、人情話の一変形として老人や大人等、年齢層が極端に違う人との友情もあります。同年代でも階級が極端に違うものはモチーフの共通性から変形として考えていいでしょう。
まず最初に、同年代の女子間の友情について詳しく検討してみたいと思います。それから他のケースに入ってもいいでしょう。
友情も始まりは出会いですね。そこから次第に仲良くなる、または反発しながら刺激しあって最終的に認めあうの二つのルートをとって友情が育っていきます。ややこしいのは三角関係がらみになることと仲良くなってから恋愛との葛藤が起きることです。恋愛と友情の両立も結構難しいテーマです。
出会いについて詳しく検討してみましょう。かなり恋愛における出会いと重複しますね。
一番多いのはやはりクラスメートとして、組替え及び入学式のときに出会うことになります。異性と違い、気軽に話し合えるので展開は楽です。軽い自己紹介から始まり、入学式の場合にはクラブ選びの相談などで打ち解けていきます。親しくなる場合にはそのついでにクラブも一緒に決めることが多いです。それから一緒に帰ったりしてグループが形成されます。この初期のグループ形成にはクラス分け時点での席指定も影響します。ここでは内気なキャラクターが乗り遅れたり、また初日の遅刻や欠席で参加できなかったりするリスクもあります。内気なキャラクターの場合、クラス替えで今までのグループが解散し、新しいグループを作ることに適応できない{クラス替えの乗り遅れ}パターンがあります。こうした場合、しばしば男子の恋愛に絡んだ助力で立ち直ることがあります。
次いで多いのは幼なじみです。定義は異性(「物心つく前から話が始まるまでの間家が隣もしくはブロック、棟レベルの近所。家同士も比較的仲がよく、もっとも早い段階から一貫して重要な遊び友達。幼稚園および学校も同一。」)と同様で、公園の砂場からの友達です。こういった場合しばしばかなり確立した上下関係の変形が見られます。それは早熟なほうが姉の役割をしてもう一方を保護し、保護されるほうは自然に妹としての役割が身についている形です。家の経済的、社会的格差がある場合には[姉]の性格によっては{意地悪役}を意味する完全な主従関係になり、また同じ部活で能力の差がある場合には(通例早熟な[姉]のほうが上。これは素質や努力の差よりは[妹]の心理的な重圧、より正確には役割意識による。最終的に逆転するほうが多い)[姉]の性格にもよりますが、疑似的な先輩後輩の関係にもなります。社会的な能力においては通例社交的で活発な[姉]と内気で非社交的、[姉]の後見によってかろうじてグループに参加している[妹]の形をとります。これが三角関係の基本モチーフであることはいうまでもありません。この{疑似姉妹}のパターンについては特に詳しい検討が必要でしょう。
それ以外の出会いはさほど多くありません。塾等での出会いは人数と所属学校が違うというだけで学校のクラス替えなどと大差無いです。それ以外には転校、部活での他校生(通例ライバル)等ですね。転校の場合、転入したものは一人で既にグループが形成されているクラスに放り込まれることになります。これが非常に困難な状況であることはいうまでもありません。どれかいいグループを見つけ、そこに新しく参入しなければならないのですから。故に社会的能力が低い、内気なタイプは孤立していじめの対象になることもよくあります。部活での他校生との出会いは対外試合等で、選手でない場合には何か事故を起こして助けてもらったり相手校の男子との出会い(三角関係)と関連して互いを認識したりです。選手の場合には試合で直接ぶつかるか相手の試合を見てその力を意識し、強い競争意識をもちます。ここの描写は多彩な得意技を使える少年誌のほうが表現技法が発展しており、少女マンガにはまだ研究の余地があると思います。少年マンガでの典型的なパターンは{自分の必殺技=兄弟又は兄弟子}や{初心者が魅せられて目標に}、{圧倒されて雪辱を誓う}等があります。詳しくはスポーツ等についての検討で。
出会い、相手と知り合って(自己紹介を交わして)から仲良くなっていく過程ですが、それを検討する前に公的な関係等を考えてみましょう。友人で多いのは何といってもクラスメートです。他には部活での仲間、塾などでのクラスメート、クラスが違ってしまったもの続いている友達、近所の幼なじみ、他校のライバルがいることが解ります。そして上の検討から、女子のキャラクターを大きく分けて社交的と非社交的に大別して扱えることが判ってきました。性格的にもより細かい検討が必要でしょうが、まだキャラクター分類は早いので後回しにします。講義全体のまとめに入ってからやるつもりです。
仲良くなっていくというのは一緒に行動し、お互いの事を知っていく中で互いに情が固まっていく過程です。その過程で相性が合わないときなど初期グループを解体、再構成する形で友人の選別が行われる場合もあります。一緒の行動はクラスメートの場合主に学校での授業(特に体育や給食)、修学旅行などの行事、昼休み等自由時間及び放課後の会話や帰り道での同行、互いの家への訪問、共同での休日行動(異性の場合における狭義でのデートと同様)等があります。部活等の友達では部活の後片づけ、着替えなどの(準)自由時間が大きな比重を占めますが、同時に普段の練習も仲間としての信頼感を醸成する意味で重要です。塾などのクラスメートは行き帰りの道が中心です。近所も含めてでクラスが異なる場合、年齢によって行動範囲が広がるにつれて一緒に遊ぶ機会が少なくなるのは当然でしょう。それが疎遠になっていくトラブルの元になります。
学校での授業において、私語は学校にとっては望ましくない態度なのですが人間関係を考えると必要不可欠です。私語を全くしないというのは人間関係能力に欠陥があるということであり、特別な指導が必要・・・もしくは事実上指導不可能だと思います。私語には席が近い場合の音声会話、離れている場合の筆談があります。体育や理科実験、家庭科などの実技授業では会話がしやすいです。給食の準備及び後片づけや掃除も重要で、共同で物事をすると同時に静寂を(校風、校則にもよるが)強くは求められません。教室移動も重要です。純粋な自由時間には授業の間の休憩、僕の小学校時代に2時間目と3時間目の間にあった20分の業間休み、昼食後(弁当の場合昼食時間を兼ねる)の昼休み、特に何もないときのLHMや自習、そして始業前、終業後があります。これらでの活動は女子の場合会話が中心になります。それが噂の温床になることは既述。男子の場合には時間がある場合何らかのスポーツ、無い場合にはカードゲーム等ちょっとしたゲームが多く見られます。
女子同士以外での友人について、出会いから発展を少し考えていきます。
男子同士の友人の場合はほぼ女子同士をなぞればすむことです。
男子と女子もほとんど始まりは同じですね。ただ会話が同性の場合とは異なってややしにくいです。幼なじみなら性意識がでてくる前に仲良くなり、その延長でつきあって行けるのですが。クラス替えなどでいきなり仲良くなるのには恋愛ものにおけるそれと同様の出会いによります。ここでは友達で恋愛感情なしですから(N+、N+)の形をとりますね。クラス内でや実技系の授業の班によって縁ができ、そこで自然と仲がよくなることも多いです。ちょっとしたトラブルなどがきっかけで恋愛感情なしで自然に仲良くなる事もあります。また、これはやや特殊ですがつきあっていたのが別れたり告白して振られたりしたのがきっかけ、ということもあります。
変形についてはまとめて後述。
友情ものの基本モチーフは{トラブル〜解決(による友情の再確認及び相互理解の深化)}です。変形として{トラブルから始まる友情}があります。これは特に三角関係の付随として多いですね。変形の友情ものと分類したモチーフの基本は全く違う世界の住人との遭遇です。
そのトラブルについて、状況別に考えていきます。状況の分類として最初に舞台と合成ジャンルを考えます。
舞台としてファンタジーで、一番多く見られるアクションものを考えます。よく見られるトラブルとしてはパーティ内での不和、裏切り、敵との友情があります。それぞれ恋愛がらみの三角関係を付け加えることができるのでややこしいです。これらは基本的に少女マンガに限らず、少年マンガにも適用されることに注意してください。状況別に一般論を作っていくだけでは、どうしてもこれが少女マンガのネタなのかまで配慮しきれないところがあります。
不和の原因には単純に気が合わない、どうでも良い事で日頃の不満がでる、嫉妬、極端な能力差(によるコンプレックス)、重大な意見対立、差別感情等です。
三角関係のとき、ファンタジーがらみのアクションとなるとその恋愛の対象である男子が(女子同士の友情に限定します)敵側か味方側か、そしてライバルが敵側か味方側かで変わってきます。恋愛の相手が敵で、ライバルは味方となりますと、第一にその恋愛自体の是非について後述の重大な意見対立が起きます。そして仲間として受け入れた場合、なんとなくその新しい仲間となった恋愛の対象に対する態度からライバルとなってしまった仲間の恋愛感情を感じ、互いに(特に一方と重大な因縁がある場合、これが極めて多い)複雑になります。それはパーティ全体の不協和音を意味します。恋愛の対象が仲間にならず、かと言って本気で殺し合うこともできなくてつかず離れずの関係になることも多く見られます。この場合には逢うこと自体が難しく、抜け駆け問題がしょっちゅう起こります。
三角関係からのトラブルについては大体のことは既述ですが、恋愛感情の存在自体を隠したりもしくは告白されたこと等を隠したりのトラブルから友情に危機が生じ、それが話そのものに関わって危機的な状況を生み、そしてパターンとしてはサブヒロインのほうがヒーローとヒロインをかばって恋も譲る事になります。これは男女対称(男女を全てひっくり返しても理論の構造が変わらない)です。
恋愛の対象が敵で、そのライバルも敵となりますと同じ敵側に立つ二人がつきあっているか、ライバルのほうが恋愛の対象を追いかけているかです。この時にはライバルに何か貸しを作ることで敵対関係が友情に変わるということが多くあります。何か、怪我をしていたりしたのを助けたとか一時休戦して馴れ合うのが主です。他には複雑ですが、因縁があって敵同士だが互いに悪い感情は抱いていないというのもあります。結果ですが、この場合トラブルはおろか友情自体がほとんど始まっておらず、その友情がはっきり形成されること自体がとっさにサブヒロインがヒロインをかばう行動に出る、それが基本です。恋愛の対象が味方でライバルも味方と言うときには単なるパーティ内でのトラブルで、普通の三角関係と余り関係がないです。違いと言えばそれから最後にサブヒロインがヒロインとヒーローをかばったり、後述しますが裏切りになったりする事です。恋愛の相手が味方でライバルが敵ですとヒーローに一目ぼれした小悪魔的な敵がアタックしてくる、といったギャグ的な展開になります。この場合よく見られるのがライバルの寿命自体がほとんどない、というものです。この時には奇跡が起きて回復するのが基本で、あ程度死にかけたほうが強いという法則が成り立ちます。
三角関係以外の嫉妬は同性の友達を争う嫉妬、能力に対する嫉妬が重要です。
同性の友達における嫉妬(同性愛ではなく、友人間にも嫉妬は存在します)について、詳しくは後述します。ただファンタジーの場合、敵対していた者がパーティに加入することが多いため、その時には新しく加入したメンバーをその加入そのもののきっかけとなったメンバーがかばい、(人間関係に慣れていない事が多い)新加入者がそのきっかけとなったメンバーに甘えるために昔からパーティにいてきっかけとなったメンバーと仲がよかった者が嫉妬を感じる、これがしばしば見られます。この場合には通例しばらく我慢していたのがぶつかり合い、それがきっかけで和解、もしくは表面的には変化していないが内心受け入れた状態になります。能力に対する嫉妬はコンプレックスのところで。
味方が裏切ったときの動機は元から敵で使命を果たしただけ、感情のもつれをきっかけに誘惑に負けて、恋愛感情、脅迫、洗脳があります。ギャグの場合にはそれを茶化すためにどうでもいい動機があります。
敵だったのが敵方を裏切り、味方&友人になる動機には助命して説得する、相手にかかっていた魔法が解ける、敵方が相手を切り捨てようとしてそれを助ける、味方の危機がきっかけ、恋愛によって、元から本気で敵に回る気はなかった等があります。
長くなりましたので今回はこの辺で。何か質問は?御静聴深謝。