パターン分類10-4
んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。
今回も恋愛以外のジャンルにおいて、友情をテーマとしたものから学校を舞台としたトラブルについて、そして特殊な友情についても検討してみます。
少女マンガ、特に友情をテーマにした作品の舞台として学校が基本であることは今更言うまでもないでしょう。基本です。ジャンルごとに考えますとギャグの分類は後回し(多分不可能)になります。
ホラーでは原因が一方による黒魔術の儀式もしくは変な生物実験等であったときとそうでないときに分かれます。それらについて詳しい定義は後で。学校と言う舞台の特殊性ですが、日直や部活などで生徒達(つまり友達のペア、もしくは小グループ。男女混合や後から男子が救援にくることも)のみで夜間の学校にいることが多い事があります。
その状況に陥った原因が一方(通例主人公の友人だが、ひねりを利かせて主人公の場合も。発生する事態自体は変わらない)の場合ですが、動機には逆恨み、復讐、親などの命令、三角関係があります。
- 逆恨みが一番多く、結局様々なコンプレックスによってです。繰り返し考察している{疑似姉妹}のパターンで、どうしても妹に当たる側は自分が下位である事に屈辱を感じ、しかもその恨みを抑圧しているものです。そして姉のほうも決して楽ではなく、可愛く愛され、甘えが許される妹に複雑な逆恨みを抱いているものです。三角関係が混じるとそれはひどくなり、表面で親しくしているほど抑圧された恨みがたまって、悪魔の誘惑に屈してしまいます。その誘惑に屈する動機に多いのが三角関係においてはもう一方と恋愛の対象が仲良くしているのを目撃する(誤解による悲劇も多い)ときや自分に望みが無く、二人が両思いだったり両片思いだったりなのが解っていて、諦めて幸せを祈るつもりがそれに耐えられなくなって等、そうでないときにはスポーツ、成績等で差を見せ付けられたとき、疑似妹の場合自分が従属的な立場と実感させられた(これには姉が人格的に酷いやりかたで裏切る・・・友達と思わせておいて本当は隷としか思っていなかった、等という場合もある。ホラーではこういった残忍な人格も許される。そうでない場合には疑似妹のほうの妄想に近いコンプレックスのことが多い)場合が基本です。
- 復讐ですが、個人が対象の場合には意地悪役によるいじめや(誤解を含め)三角関係で恋人を取られた恨み等が考えられるでしょう。また何か、例えば冤罪で責められた場合などに見捨てられたりした等、信じてもらえなかったりいざと言うときに助けてもらえなかった(小さい頃の忘れていたような事件も含む)等も大きいと思います。この場合被害者になったほうは何のことかも解りません。いじめのように加害者の特定が難しい場合にはクラス全員など、漠然とした全体を恨むこともあります。この場合にはその怨念と友情の葛藤が主眼になります。
- 親などの命令ですが、加害者になる者がその親や教師等、邪悪な大人の支配者がおり、その命令によって動かされています。例えば生体実験の材料や悪魔の生贄等として友人を連れてくるよう強制されて、と言ったパターンです。この場合にはその加害者になるものがぎりぎりで自己を犠牲にして主人公を助け、友情に応えたり恩返しをしたりするのが基本パターンです。無論その逆、全く感情なしに任務を遂行してしまうこともあります。
- 三角関係は上述。かなり単純にライバルを排除するための犯行もあります。そうでない、全く外部による災難の形なら既述のアクションのところを参考にしてください。ただ、少女誌のホラーは少年誌に比べて人格的に陰湿なキャラクターが多い気がします。そのため、パターンの逆で悲劇にいくこともままあります。例えば最後のところで普通なら助けるはずの場面で最悪の形で裏切り、結果的に両方破滅するなど、救いの無い話も許されます。ホラーについては専門外に近いので、かなり議論が荒いです。プレプリ、いやちょっとしたノート程度と思ってください。
サスペンス及びミステリーにおいては友人が犯人である場合とそうでない場合に分かれます。無論変形として主人公が犯人もありですが。
- 友人が犯人であるときには、その動機と主人公が関係しているかどうかが重要です。関係しているときには上述と同様の抑圧された憎悪です。していないときにはですが、主人公は事件とは直接関係ない外部の存在ですね。それを騙し、誤誘導ながら事件を進めているわけで、罪悪感はあるでしょう。特に最終的に他の誰か(不本意ながら命令等で主人公を、という場合もある)を罪に陥れるような場合には。その反面、主人公に救って欲しいという気もあります。それが無意味に主人公を攻撃したりする行動や(気付かれることの無い)隠れたメッセージに結びつき、主人公は全てが終わった後(犯人だった友人が死を選んだ場合など)救ってやれなかった事を悔いることに。
- 友人が犯人でないときには両方被害者か、両方関係なしかです。単に巻き込まれただけで、様々なピンチに応じてかばいあったり本音とエゴをむき出しにして喧嘩したりします。
アクションですが、少女マンガで学園アクションは余り多くありません。少年誌のファンタジーがらみでない学園アクションの中核になる非行については家庭のところで詳述の予定です。基本的な構造はファンタジーのところで詳述したのを参考にしてください。
スポーツ等について考えますと、前回詳論したのと比べて構造が単純になり、少なくとも現在においてはそれほど家族などのどろどろしたのが無いことが異なります。それを除いては前回の兄弟姉妹でないパターンで尽くされています。
特殊な友情ですが、男子同士の友情、男子と女子の友情、人情話の一変形として老人や大人等、年齢層が極端に違う人との友情、同年代でも階級が極端に違うもの、ファンタジーに近いもの等が考えられるでしょう。
- 男子同士の友情は女子同士とほぼ同じです。違いと言えば{疑似姉妹}のようにべったりした関係が余り見られないことでしょうか。殴り合いなどの勝負だけで全てが解決するなど、様々な類型化も見られます。
- 男子と女子の友情は既述の通り恋愛に変わってしまうことが大半です。恋愛として発展しなくとも大抵男子が(望みのない三角関係などで)恋愛感情を押さえています。顕在化する前、何かで励ましたりすることも多いですが、それらは普通顕在化のきっかけになってしまいます。恋愛と区別がつかないケースや恋愛以前の微妙なところで止める事もあります。非常に微妙で、難解なものです。ある意味細かい検討は先延ばしにします。
- 年齢層が極端に違う人との友情ですが、パターンとしては中高生の主人公と幼児、大学生位、大人、老人が考えられます。また妖精や天使など、ファンタジー的なものもここに入れていいでしょう。上の異性もそうですが、違う世界に生きている者との友情では、一般に出会いからして変です。互いに相手を気持ちを理解するのも大変ですが、通じあった後は非日常だけに、互いに癒しになるケースが多いです。それだけにこれが起きる前の段階、つまり話が始まる時点で主人公が何か悩みを抱えている事も多く見られます。
- 幼児との出会いですが、これの出会いでは{子育て}パターン、つまり親類の子供等を預かるとか{さぼって天使と出会う}パターン、つまり失恋や部活での敗北や怪我による再起不能などの挫折をきっかけに学校をさぼってさまよっている際に偶然迷子の子供(天使であることも多い)と出会う等があります。始めは悩みが強い後者の場合には、その可愛らしさも感じられないほど自己中心的になっています。けれどもだんだんと打ち解けていき、仲良くなって慰められていきます。途中でその子を見失ったりその子が事故に巻き込まれたり等があると必死で心配しますね。{子育て}の場合には始めは可愛いのですが、だんだんとその手間やわがままが鬱陶しくなっていきます。かといって幼年少女誌では虐待はタブーです。基本的な経過は子供と付き合ううちに童心に返り、忙しい自分を振り返る余裕ができて最後には心が通いあうことになります。幼児は鏡として自らの姿を映し出し、そして無限の愛情で包んでくれる、それが一般的です。現実はどうだか知りませんが。
- 大学生ぐらいの年上の場合、男性だったら恋愛になるのですが主人公と同じ女性の場合には複雑です。一般に大人に対して中高生は、反発と憧れの背反した感情を持っています。主人公のほうは何か悩みを持っています。上級生のほうも何か苦しんでいます。あまり見られません。
- 大人との友情は教師、親の友人、何らかの(芸能界などのジャンルででてくる)仕事上の付き合い等があります。本来友情は生まれにくいのですが、それに近いレベルで共感することはあります。何か悩みを相談したり、助けられたりして心を互いに開き、対等に近い心情になる事が友情のきっかけです。若返ってしまった大人と友達付き合いをする、というパターンもありますね。
- 老人の場合、男女は関係なくなります。互いにあまりにも遠い存在ですが、たまたま接触することもあります。主人公から見ると最良の相談相手であり、特に凄まじい戦争体験を聞かされると恋愛の悩みなど小さく思えます。逆に老人から見ると青春真っ盛りの中高生はまぶしい存在です。
- 妖精や天使などですが、これは上述の{さぼって天使と出会う}型のもの(これはキューピットである場合も多い)や年齢的に対等に近いもの、年上もあります。また住む世界が違う存在として、外国人(謎の外国人や転校生等)もあります。また、極端に身分の違う存在と入れ替わってみる({乞食王子})もありますね。
恋愛がらみ、つまり三角関係についてといじめについての検討は次回に回します。
今回はこの辺で。何か質問は?御静聴深謝。
次
もくじへ
もえるごみへ
ホームへ