パターン分類8-1

んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。

今回から告白に入ります。いうまでもなく大半の少女マンガにおいてクライマックスとなる最大の山場です。生まれ育ってきた恋愛感情を相手に伝えたい、そして相手も同じ思いだったらどんなに素晴らしいか。でももしかして片思いだったらとの不安があり、特に友達同士では全てをぶち壊しにしてしまうのでは、と現状維持の誘惑が頭をもたげます。ほとんどの人にとって少なくとも初めての告白の時にはそれまでの短い生涯で最大の勇気を振り絞った筈です。自分の全てを「好き」の一言に託し、相手にぶつける緊張感以上のものはそうないでしょう。本命の面接や職を賭した行動がかろうじてそれに匹敵することがあるぐらいですね。

検討すべき点を考えてみますとまずきっかけ、誰がだれに、具体的な内容、状況、返事とその理由、その後の双方の対応が挙げられます。

きっかけとして考えられるのはごく自然に、トラブル解決の手段として、状況から、感情が押さえられなくなって、気持ちがばれたため、酒の勢いなどで(これは範囲外です)、計画通りに、出会いと同時に、危機感に負けて等が考えられます。

ごく自然に・・木の実熟れて落ちるがごとく、これが理想です。時間をかけて育もう〜愛という名の蕾を〜(「エリザベート」より、[NICHTS IST SCHWER])とばかりに出会いから始めは大事な友達として次第に心を通わせ合い、初めて知る感情に戸惑いつつマイペースに成長していき、そして波風を越えて確かな思いを伝え合う・・何か結婚式のスピーチみたいですね。時間(とページ)がかかるのが難点ですが、一番後味がいいです。現実にも皆様これを目指しましょう。特に長編連載で大変な事件をくぐり抜けた後、思い返しながらのデートで自然にとなるのは最高のフィナーレになります。このようなときにはもう言葉は必要なく、いきなり自然にキスすることも。ただこれは、両方が自然に気持ちが熟していれば理想ですけど一方だけがそこまで行っててもう一方は恋愛感情の顕在化もまだ、といったときには噛み合いません。友達同士の時にはこうなりがちです。またそれまでにトラブルなどでやむを得ず告白する等のほうが多く、特に読み切りでこれはページ的にきついのでしょう。くっついた後が主眼の話で冒頭に告白をもってくる時にはこれもありますが。

トラブル解決の手段、これが一番結局多いですね。誤解を解くためには行動の動機を説明する以外になく、それがそのまま告白になってしまう。これは他にどうしようもないです。又これについては友達が誤解の基本的なところについては説明してくれ、でも肝心の動機については教えずに「自分で考えなさいこの鈍感男」とか「直接聞いてみなさい!」とかになることもよくあります。又三角関係では相手が主人公が他の人のことを好きだと思い込み、それなのに自分にアプローチすることに怒ったり傷ついたりして激昂する事も。詳しくは誤解の項で復習して下さい。誤解が行き詰まるともう告白しかないです。嫌われると思い込み、今しかないととっさの勇気でというのも多く見られますね。注意すべきなのはつきあっている中での再告白パターンではほぼ全てトラブル解決の手段もしくは経過であることです。そのほか、あらゆるトラブルについて解決のための最終手段として告白が用いられます。詳しくはトラブルについて復習してください。

状況が後押しした告白にはイベント便乗と周囲の圧力、やや複雑な直接的な事情、緊急時等があります。これらには流されてという面があり、トラブルの種を残していることが多いです。

イベント便乗型には文化祭の後夜祭、林間学校のキャンプファイヤー等の学校行事と夏祭り、クリスマス、バレンタインデー等の民間イベント、転校や卒業などの変化などの機会に乗じてです。これは他と絡みますね。以前から計画してのこともありますし、そこでおきたトラブルが影響することも多くあります。このようなときには告白の抵抗感が薄れます。皆もやっているし、周りもこの機会に告白する、と騒いでいますし。唯この告白には(トラブル型でなければ)迎合的な面があり、まだ熟しきっていないが故の危険があります。自分の気持ちに対する省察力も育っていないですし。唯転校などの別離に属する状況下ではそこで言わなければ手遅れでしょう。やむを得ないです。様子見が長すぎるとここに追いつめられることになります。

周囲の圧力は主人公の気持ちを知っている友人達がからかい半分で告白を勧める、又は強要することです。親や教師がそういう勧めをすることはまずありませんね。この行為の動機には親切があるように見えますし、当人も大体そう思い込んでいます。端から見て言わないけど明らかに両思いなのだから、と。ですがこれは今すぐ告白しないとだめになることが明らかだ、という場合を除いては余計で危険な干渉です。深層的な動機にはのぞき見趣味が少なくとも含まれています。恋愛は個人の問題であり、聖域であることを認めたくないのです。本来相手に必要なしなければならないのは励ましであり、客観的かつ冷静な現状の分析であり、相手に自信を持たせることであり、緊急時の警告及び救出であり、自分の経験に照らし合わせた助言であるはずです。ですがしばしば偽りの経験や不確かな噂、メディアの情報などに相手を当てはめようとし、自分の真実は隠し通すくせに相手にまず誰が好きかを言わせ、次には告白を強要し、さらには性体験についても話させる・・これは相手を実験台にしているのと同じです。換言すると自分達も盲目なのにそれを隠して盲目の仲間に先に行かせ、心のどこかで地雷を踏むのを期待しているのです。皆大人になってもやっていることですが。また後述しますが告白に付き添いは不要ですしろくなことになりません。内気でどうしようもない娘もいますが、それでも告白だけは自分でするべきだと思います。焦らずしっかりとその成長を見守ることも必要なのです。ついもどかしいと芽を引っ張って枯らしてしまうこともよくありますね。それに流されて告白してしまった場合には(確かに抵抗はとても難しいことですが)そのこと自体を理由に断られることもありますし、うまくいってもしこりが残ります。これは個人の主体性の問題です。

複雑な動機として僕が挙げておきたいのは偽りも含め本意でない告白です。三角関係にしばしば見られますね。本命やその彼女になった親友を傷つけたくないから気持ちを押し殺してアプローチしてくる彼の友達にOKを出す等。相手が相手自身を責めているのを見たくないから等、相手の弱さを支えようとしてもあります。唯これも偽りは勿論ですが火種を残していますね。他には噂になり、こじれるよりははっきりしたほうがいいとその場で、というのもあります。これはかなり気持ちがしっかりしていないとできませんし、そうでも想像を絶する勇気と強さが必要です。

緊急時についてはファンタジーや犯罪がらみで相手が自分をかばって死にかけたときなどです。これについては以前やりましたので省略します。所詮種族維持本能です。

感情が押さえられなくなっての告白にもトラブルが絡みますね。トラブル解決後の安心感からついぽろりと、ということもよくあります。相手の鈍感さに腹が立ってつい、とか三角関係でサブヒロインがヒーローにべたべたするのに耐えかねて強引にキスするとかもあります。この場合は自然な告白に近いです。だから経過は基本的には良好なのですが、目撃者がいるケースが多くいきなり公認になったり恥ずかしさに負けた相手がその場ではNoといったりします。又頭に血が昇っていますから上手くいってもそのまま夫婦喧嘩になることも。またこれが言葉での告白ではなく、ついキスした等になりますと(大抵男からです)一種の強姦ですからしたほうには罪悪感、されたほうには戸惑いと心の傷が生じます。これについてはトラブルのところで詳しく触れておくべきだったかも知れません。スキンシップのところでより深く研究します。

気持ちがばれる要因には事故もしくは故意の立ち聞き、噂等があります。詳しくはトラブル中のハプニングを参照してください。又友達のお節介もありますね。これは告白といえるものではなく、基本的に不本意です。だからそのトラブルを解決するためどこかできちんと告白すべきです。そうでないと必ず不安がお互い生じてきます。

飲酒は本来禁止ですから望ましくないですが、やはりよくあります。大人になると逆に大半になってきます。飲酒による告白でよくあるのは記憶が飛ぶことからのトラブルです。同じ酔うでもムードに酔うのもあります。これは本来状況に含まれるかも知れませんが感情そのものが普通ではないということで。いいムードが生まれる状況には夕日の砂浜やホワイトクリスマスなどの景色が醸し出すロマンチックなそれと夜の公園や二人きりで嵐の中教室に閉じ込められた、同じ布団やロッカーの中に隠れた等のむしろ性的なそれなどがあります。ロマンチックなムードによる告白はそれなりの気持ちの積み重ねがないと無理ですからかなり自然なものでしょう。逆に性的なものでは何処までが恋愛感情で何処からが性欲によるものなのか後で見失いがちで、かなり危険です。また・・基本的に幼年少女誌の対象外です。少し言い訳、ちょくちょく幼年少女誌の対象外の内容がでてきますがそれも一貫的に理論化するためです。僕は還元論者ですからより広い理論から見下ろさないと物事が理解できいのです。又最近は幼年少女誌の規制もずいぶんと変化しているようですし。どうか御理解&ご寛恕をお願いします。

計画通りに告白するのには例えば次の誕生日までになど期限を切って、勉強やスポーツで目標を達成できたらと願掛けとしてなど自分を追い込むためです。友人に宣言することが多く、その宣言と計画自体が友人の強要であることもしばしば見られます。計画は一見冷静で合理的に見えますが恋愛に関しては愚かなことです。ここはあくまで弓道の離れ(矢を射放すこと)と同様に心、気共に充実した正しい会(射放す寸前の弓を引き絞り切った状態)を目指し、後は心と体が自然に矢頃(射放すタイミング。自分で制御しようとするのは厳禁であくまで自然に任せるのがよいとされている)に達するのを待つのが正しいと思います。大概「計画通り上手く運ぶわけがない、予定通りいかない番狂わせ」(エリザベートより[SO WIE MAN DENKT,SO KOMMT ES NIE])が起きるか結局告白できずにどうしたのよ、と友達に責められるのが話の冒頭になるかです。また少し余談ですが「夢食案内人」で「自己ベスト出したらおまえに告白するっ!」というのがありましたがそれ自体が完全に告白だと思うのは僕だけでしょうか。意味ないような。

出会い頭での告白はかなり大胆です。強い(+、−)型の出会いを演出するため結構用いられます。普通(非常識ですし)即座に断られるますがそのまま縁ができて告白したほうはめげずに迫り続けることになります。

危機感に負けてというのはやはり三角関係で振られ役のほうがすることが圧倒的に多いでしょう。急速に好きな人がライバルに惹かれているのを直感し、焦りからかなり強く、状況によってはライバルの前で告白することに。追いつめられての行動はいうまでもなく大抵悲惨な結果に終わります。OKがでても偽りであることが多く、最終的には身を引く羽目に・・・。

やはり恋愛感情があっても告白には大きな勇気がいります。ちょうどエネルギー準位の問題と同じく、恋愛感情がふくらんで時には何かの後押しを借りて羞恥と臆病というポテンシャルのダムを乗り越えねばならないわけです。後押しは小さくてすむほうがいいのですが、現実には中々難しいですね。ハプニングというトンネル効果もありますが。

それでは今回はここまでにします。宿題として自分の体験した告白について思い返し(レポートの必要はありません。プライバシーですから)、好きな作品の告白についてレポートをまとめてください。

何か質問は?御静聴深謝。

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