ごく個人的な、民話などを擬した物語…霊的自己紹介。

 昔々あるところに、一人の男の子が生まれました。
 彼は愛情に包まれてすくすく育ちましたが、ひねくれていて目も鼻も耳も使おうとしませんでした。
 大きくなって、彼は両親にお金ときれいな上着をもらって旅に出ました。でも上着がきつかったので、すぐ捨ててしまいました。

 旅の途中、彼はお姫様が竜に襲われているのを見つけ、石を投げて竜を殺し、野の花を摘んで渡そうとしました。
 でも、竜だと思ったのはお姫様が可愛がっていた馬でした。また持っていった花はひどいにおいがしました。お姫様は出て行くように言いました。
 でも彼は動きませんでした。彼は目、鼻、耳が悪く、それでしゃべるのも下手なのです。
 お姫様は彼に黒い指環を渡して行ってしまいました。

 旅を続けていて、彼は素晴らしい剣の噂を聞きました。その剣があれば、お姫様は自分と結婚してくれるかもしれません。胸を張って家に帰れるかもしれません。目も鼻も耳もよくなるかもしれません。
 彼は森にたどり着きました。

 最初の門では、金を全部出して門をくぐるか、半分出して町に向う船に乗るように言われました。
 彼は金を全部払い、門をくぐりました。

 次の門は二つに分かれていました。一方は鏡の部屋の入り口で、もう一方は錆びた門でした。
 彼は錆びた門を選びました。

 次の門では、鼻をよこすか、戻って畑を耕すか選べといわれました。
 彼は鼻を差し出し、門をくぐりました。

 その次の門では、耳をよこすか、そこにとどまって石を拾うか選べといわれました。
 彼は耳を差し出し、門をくぐりました。

 最後の門は崖っぷちにありました。彼はそこで門番に、目をよこすか崖からとび降りるか選べといわれました。
 崖から飛ぼうとしたら、指輪が強く締まり痛くて悲鳴を上げました。
 それで彼は自分の目をくりぬいて差し出しました。すると門番が門を通してくれました。

 門を抜けると、そこは溶岩の広い川で、中州の小島に小さい橋がかかっていました。
 彼がその橋を渡りだすと、橋は彼の後ろから崩れだしまし、彼は走って小島にたどり着きました。

 島の真ん中の木の枝に、みごとな剣がかかっていました。
 彼は剣の柄に手を伸ばしました。すると剣は炎を発し、熱さに彼は手を引っ込めました。
 あきらめようとしたら、小さい子供が出てきて剣を指差して泣き叫びました。

 また手を伸ばし、剣を手にしましたが、重くて持ち上がりませんでした。
 あきらめようとしたら、小さい子供が剣を指差して泣き叫びました。

 また手を伸ばし、剣を手にしたら、木が巨人に変わりました。
 剣で切りつけましたが目が見えないので外れ、勢い余って地面ごと自分の足を切り、巨人に吹き飛ばされて剣を落としました。すると巨人は木に戻りました。

 もう一度手を伸ばし、剣を手にしたとき、気がつくと彼はお姫様と故郷の両親兄弟姉妹を切り殺し、大きな木を切り倒そうとしていました。そして故郷も町も全てが燃え上がり、ひどい飢饉が起きるのが見えました。
 彼は悲鳴を上げて剣を投げ出すと、それらは消えました。

 帰ろうとしましたが、橋はもう崩れ落ちています。なんとか帰り道を探そうにも、目も耳も鼻もありません。向こう岸に行けたとしても、目も耳も鼻も、金も上着も剣もなく、また町は燃えて飢饉に苦しんでいます。
 崖から溶岩にとびおりようとしたら、指環に締めつけられて悲鳴を上げました。
 そのままじっとしていると、また小さい子供が剣を指差して泣き叫びます。
 そしてその島には、まずく食べても食べても腹が減る木の実しかなっていません。
 そのまま子供の泣き声に悩まされながらしばらく過ごして死んでいきましたとさ。

 竜や宝物のそばには、たくさんの骨が散らばっているものです。

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